インドネシアの労働人口について

インドネシアの労働人口について

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現地労働者の能力向上が喫緊の課題

2014年7月に10年ぶりの大統領総選挙がおこなわれるインドネシア。選挙結果によらず、今後も自国労働者保護の政策は続くとみられる。進出企業にとっては、インドネシア現地労働者の質の向上が課題だ。

人口ボーナスは2030年までは継続。

インドネシアは、総人口に占める生産年齢人口の増加が2030年までは続くとされている国である。中国やタイは2010年代の前半に生産年齢人口のピークを迎えており、ベトナムは2020年までといわれているから、生産年齢人口の視点から見たインドネシアの魅力は、他国と比較しても高いとみていいだろう。

しかし、ここで問題にしたいのは、生産者の「数」ではなく、「質」である。一例をあげると、インドネシアには複数の外資系自動車メーカーが参入しているが、多くの企業はインドネシアでは一部パーツを製造し、最終的な工程である組み立てはタイでおこなっている。その理由の1つとして、インドネシアの労働者に対する職業能力上の課題をあげる企業もある。

インドネシアにおける労働の質を上げるには、(1)労働の質の向上に必要な人材を本国から派遣する、(2)現地で調達する人材レベルを上げる、(3)現地人材を育成する、の3つの方法が考えられる。(1)については、インドネシア政府が外国人労働者に対する規制を強化しているため、本国から現地に派遣する人員を増やすことは現実的ではない。(2)の現地での調達であるが、オフィスワーカーの調達は容易ではない。その理由は、労働市場において一定レベルのスキルを持つ人材が限られていることと、外資系企業の進出増加によって、需給バランスに乱れが生じていることにある。

そうなると(3)の現地人材を採用して自社で育成することが求められるわけだが、これも簡単にはいかない。現地で工場を稼働して数年経つ外資系企業でも、マネジメント層が不足しているという実態がそれを物語っている。そもそも、インドネシアの大学進学率は、マレーシアや中国よりも低く、労働市場における大卒者は6.4%程度であり(国家統計局“National Labor Force Survey 2012”)、職業能力の向上を目指した施策も順調だとはいえない。むしろ、インドネシア政府は外資系企業に対して、自国の労働者の能力開発を期待しているようにも見えるのだ。

引き抜きリスクを見こした人事施策を

インドネシアにおいて自社内での人材育成を考える際には、他社からの引き抜きリスクを考慮する必要がある。

インドネシアには古くから続く財閥があり、IMF(国際通貨基金)勧告以降も財閥の力は衰えているとはいえない。現地の求職者は、財閥系現地企業への就職を最優先に考えており、次に外資、最後に財閥系ではない内資企業が続く。この状況は今後も変わりはないだろう。つまり、外資系企業において限られた優秀なインドネシア人材を獲得したとしても、財閥系企業に引き抜かれるリスクがあるということだ。

また、外資系企業のなかででも賃金の高い業界に引き抜かれる可能性がある。大学を卒業した20~39歳の若年層を対象とした、「グローバルキャリアサーベイ」(リクルートワークス研究所、2012)の結果では、インドネシア人の4割強が「仕事をする上で大切だと思うもの」を「高い賃金・充実した福利厚生」であるとしている。ちなみに、タイ・マレーシア・ベトナムでも同様の傾向が確認されているが、アメリカ・オーストラリア・日本においては、「自分の希望する仕事内容」が最も高い。

外資系企業はこうした引き抜きにあったとしても業務遂行に支障がでないよう、赴任者や現地人材で補いたいところだが、先に述べたようにそれは容易ではない。育成コストをかけて、現地人材の育成に励まなければならないわけだが、その際には、育成した人材が引き抜きにあわないよう、現地人材にとって魅力的な人事施策を整備することが求められる。

賃金や労働時間を整備する

ここで、人事施策を整備するうえでの参考として、リクルートワークス研究所が2014年3月に現地のマネジメント層を対象として実施した「ASEAN4カ国の職場実態に関する調査」から現地企業のオフィスワーカーの働き方を確認してみよう。

本調査は、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの従業員100名以上の企業で、現地のマネジャーとして働く、各国200名を対象に実施されたものである。男女比率は6:4であった。

本調査によると、インドネシア従業員の平均勤続年数は5年半であり、他3カ国と比較をしても大きな差はない。平均的な労働日数は週当たり5.4日で、労働時間は42.5時間と、4カ国のなかで労働時間に差は見られない。職務範囲を超えた仕事の有無についても、「よくある」「ときどきある」と回答した人の割合は、74%に上る。インドネシアといえば、デモや労働争議のイメージが強いが、現地企業で働く者を対象とした調査の結果を見てみると、労働争議や労使紛争の有無を尋ねた質問に、「(過去1年間に)あった」と回答したのは、3割程であった。主だった内容は、賃上げや超過勤務についての交渉だ。

この調査結果を見ると、職務範囲を超えた仕事を日常的におこなっているが、あわせて、賃金や超過勤務に対する処遇の整備が強く求められていることがわかる。

今後も政府は現地労働者保護の方針

さて、インドネシアでは2014年7月に10年ぶりの大統領総選挙がおこなわれる。各政党が候補者を擁立しているが、4月の総選挙で第一党となった闘争民主党の大統領候補である、ジャカルタ特別州知事のジョコ・ウィドド氏と、元陸軍戦略予備軍事司令官であるプラボウォ・スビアント氏の接戦になるとみられている(2014年5月24日現在)。国民に人気の高いとされるジョコ・ウィドド氏の属する闘争民主党は、ASEANで最も企業にとって厳しいとされる、2003年の労働法を制定した政党でもある。この労働者寄りの労働法に関してはこれまでに幾度も企業団体から反対の声が上がっていたが、制定から10年以上経った現在も改定されることなく適用され続けている。

大統領選挙の結果がどうであれ、今後も政府の労働者保護の姿勢は変わることはないだろう。そうした場合、インドネシア進出を検討している企業は、現地人材の能力開発に加え、労働法で規定されている、解雇にかかるコストもあわせて検討する必要があるだろう。

インドネシアは人口の多さから消費大国とも称されるが、所得格差や教育格差の問題も見逃すことはできない。7月の大統領選挙およびその後に着手されるであろう各種施策の動向に注目する必要がある。

 

 

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